Book
Leave a comment

ベロシティという名の信念と哲学 “ベロシティ思考”

「ベロシティ思考」

アジャズ・アーメッド (著), ステファン・オランダー (著)

この本は、今年の最重要本と言って良いと思います。

AKQA率いるアジャズ氏と、NIKEデジタルスポーツ担当副社長ステファン氏による「対話」。

デジタルや広告といった領域を越え「どう生活者と社会と、企業とが関わり合う事が、今後大切になってくるか」を、経験・哲学・信念がベースとなり、語り合われた、極めて広い視野を持った書籍です。

「対話」という形式が持つ、言葉の強さとリアリティ。

そして「クリエイティブエージェンシーとクライアント」という関係でありながらも、哲学やビジョン、信念の強さが持つ共通性。

この本の特徴とは、トレンドに立脚したデジタル・コミュニケーションの話ではなく、送り手が持つべき本質的な姿勢・信念・哲学を知り、自戒し、学ぶ事ができる、という事だと思います。

消費者とのつながりを管理し、

育てていくプラットフォームをもっていなければ、

背骨のない会社になってしまう。

顧客との接点は、ほとんどすべてデジタルになってきている。

だから、どのブランドもソフトウェアカンパニーになる必要が出てくるだろうね。

こういった自然な言葉は、トレンドで語る立場では、まず出てこない思想です。

そして、ブランドが持つ哲学と、提供する製品・サービス、広告との「一貫性」という点でもそうでしょう。

ナイキでは、すべての活動を通じて、スポーツやアクティビティのすばらしさを伝えることに力を入れている。

ある時はインスピレーションを、ある時はモチベーションを与え、みんなが楽しく、効果的にスポーツに取り組めるようにする製品やサービスに力を入れることによって、人々が「とにかくやってみる(Just Do It)」ことをサポートしているんだ。

思想が「Just Do It」だから、支援するプログラムを我々は提供していくんだ、という帰結は思想そのものを体現するものだと思います。




そして、なにより自分がこの書籍で好きなのは、「細部にこだわる」ことへの徹底言及です。

このような大企業かつマネジメント職の人が語る言葉には、ディテールへこだわることの大切さ、を伝える人は多くない事が現状だと思います。

送り手としての良心、矜持。

それらが信念として凝縮されている点に、素晴らしさを感じます。

「優れた企業に共通する特徴は?」と尋ねられることがあるんだけど、その特徴をこの一言で集約できると思う。

それは「細部へのこだわり」だ。

常に、やり過ぎというレベルまで行きたいんです。

やり過ぎたとしても、必要なら元に戻すことができます。

とりあえず事足りる、というレベルでは、必ず後で失望することになりますから。

アウトプットへのこだわり、愛情、プライド。

これは、どれだけその人物がそこにコミットしているか?を示す、試金石となる質問であり答えだと思います。




そして最も、自分がこの本の意義として感じること。

それは「経験と哲学と信念と愛に基づく姿勢は、純粋にかっこいい」という事です。

「かっこいい」と感じる事。

それこそヒーローのような。

信頼できる本物の価値をもったブランドが新しい環境にすっと入っていけるのは、強い信念や確信を持っているからなんだ。

業界そのものの未来や、これからを担う人材。

それをポジティブなものにしていく為にも、これはとても大切な事だと思っています。

そして、最後のレイ・イナモト氏による「広告の未来は、広告ではない」と題する寄稿。

あらゆるコミュニケーションに関わる方、全てが読むべきものだと思う、素晴らしい内容です。

未来とは

「マス広告」ではなく「ソフトウェア」

「メディア」ではなく「プロダクト」

「ブランドの物語」ではなく「ブランドの行動」

「キャンペーン」ではなく「プログラム」

「360」ではなく「365」

さまざまな自戒を通過しながらも、それぞれの読み手の未来へ強いビジョンを訴えかけ、勇気づけられる、素晴らしい本です。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です