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「かないくん」を読む。説明ではなく目線の共有体験が生む物語。

素晴らしいし、大好きなんだけれど、 「ここが素晴らしい!」「ここが好きなんだ!」 と、うまく言い当てることが出来ない時って、多くあります。

「それ」の良さが、どうも掴めない、とか。
掴むことができない自分にすら、もはや歯がゆい、とか。



ときに、無理やり「その良さ」を言語化してみたりもします。
でも、言葉にした途端、大切な事を明らかにこぼれ落としている。
見つけている感じがしない。
つまらないあ、類型化してるなあ、ちがうなあ。
自分で言語化出来ないから、他人ともうまく共有できない。
結局「決められない、でも好き」という距離感で、付かず離れず付き合い続けている。

そういう作品って、人それぞれあるんじゃないかと思います。

かないくん
かないくん
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谷川俊太郎
東京糸井重里事務所
売り上げランキング: 20

先日発売されたばかりの絵本「かないくん」。

谷川俊太郎さんが文を書き、松本大洋さんが2年の歳月をかけて描いた、「死」がテーマとなった絵本です。
装丁は祖父江慎さんがなさっています。

この絵本、一見するとすごく淡々とした目線の作品に感じるかもしれません。

「なぜ、少年の心細さに、懐かしさを覚えるんだろう」
「なぜ、いきなりおじいちゃんと、孫の話になっちゃったんだろう」
「なぜ、はじまりだと思ったんだろう」
「なぜ、自分は、そのはじまりの瞬間に感動しているだろう」
「なぜ、この白の世界をこんなに美しいと感じるんだろう」

要は「劇的でない」というか、「説明的」でないんですね。
すごく淡々と、少年の目線、孫の目線で、状況が描写されていくのです。

でも、しばらく読み進めると、目線が少しずつ変わってくると思います。
子供の事に、一度は囚われた「死んだらどうなるの?」「死ぬのってこわい」。
その怯えの記憶が呼び起こされ、引きこまれていくのでないかと思います。

そして、その少年の描写が淡々と積み重ねられた後で、ポーンと今度は全く違う世界へ転換する。
そこで感じられる、「死」と地続きにある「生」への気づきにつながる、スコーン!と抜けるような「はじまり」の実感。
その「はじまり」を象徴する「白」の世界の開放感!晴れやかさ!!

説明は全くないまま、描写の積み重ねだけで、全くちがう世界へ連れて行かれていってしまう。
そして言いようのない感動の読後感がある。


「うまく説明できないけど、とにかくすごい!」

何がすごいのか。なぜうまく説明できないのか。
読んだ後で一晩置いて思うその理由の一つは「説明描写」を通じて「理解する」という類いの作品でないから、という点です。

つまり「体験だから」。
「物語を読む」というより、この絵本は、少年の目線を通じて自分の過去の記憶へ戻っていく、個人的な体験色が強い絵本の類いだからと思います。

「体験」から感じる事は、人それぞれで違う。
だから、いろんな解釈があるし、うまく表現できない事もある。
でも、「体験」しか提供していないから、作品としてそれら多様な解釈を受け入れる包容力を持っている。

そういう至極当たり前だけど、物語の本質を差し出す絵本なんだとも思いました。

ともあれこれは、手にとり、めくり、感じながら、読むことでしか得られない物語体験。
まだ、全く頭のなかで整理がついていないですが、今年、強くおすすめする素晴らしい絵本です。


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