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「今ここ、を生きるための『○○』」を探す。 “スエロは洞窟で暮らすことにした”

スエロは洞窟で暮らすことにした
マーク サンディーン
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 79,884
 

本書を知り、読むきっかけになったのは、このコラムから。
「LINER NOTES vol.01 “スエロは洞窟で暮らすことにした” – CNTR」

即購入し、結論から先に言えば、そのまま即日で一気に読了。
推薦が既にあるにも関わらず、自分もこうして何か考えざる/書かざるを得なくなる程、揺さぶられた本です。



 

「自分が60歳になったとき、生活はどうなっているんだろう?」
「その時、仕事はちゃんと付けているんだろうか?」
「というより、1年後の自分の生活はどうなっているんだろう?」
「もっと変わっていかないと、自分はこれから生きていけないんじゃないか?」
「いや、むしろもっと根を張っていかないとダメなんじゃないか?」
「こんなことをしたら、人からどう思われるだろう?」

程度の差は人それぞれながら、誰しもがその時々の年齢や状況に応じ、例えばこんな葛藤や未来への不安があるかと思う。
もちろん自分もその最中で揺れ動いている。

一方で「富は持てば持つほど、幸福感も下がっていく」
そのような調査もはあるそうだ。

有象無象の未来への不安。
それとどう折り合いをつけることで、心に平安をもって自分は生きていくのか?
ある意味最も考えたくない、最もしんどい問いへ、「こういう回答もある」という例を差し出すのが、スエロのこの生き方です。

贈与経済という一つの選択肢

米国ユタ州モアブの洞窟に暮らすスエロ。
彼は、39歳のとき、全財産(30ドル)を電話ボックスへ置き去って以来、50歳を過ぎた今に至るまでの10年以上、全くお金を使わずに暮らし続けている。
捨てられた食べ物や無償で与えられるものだけを受け取り、一方ボランティアや農作業などで無償に与え、連帯する。

洞窟で暮らしているからといって、社会から孤立し、一人で生きているというわけでもない。図書館のPCで自身のブログを更新し、他者と共有し議論をし、彼から学びたいと望む若者がいれば、一緒に洞窟で暮らしたりもする。

いわゆる「贈与経済」を現代で実践し、示すスエロ。
この本は、なぜ、彼がそのような生き方を選ぶに至ったのか?彼の半生をノンフィクションとしてたどることで、その軌跡を伝えるという構成となっています。

君は本当は、何に囚われているか?

この「お金を使わない生き方」という、スエロの究極かつ対極な生活が示す問い。
それは「人はなぜ、お金に囚われてしまうのだろう?」という事だ。さらに踏み込むなら、正確にはきっとこうかもしれない。
「君は、本当は何に囚われて、今生きているのか?」

前述のようなスエロのライフスタイルをもし表面的にだけ切り取るなら、ヒッピーカルチャー的「ちょっと素敵」な感じの光景が生まれてきそうだ(それこそinstagramやfacebookなんかで)。
また、断片的な情報だけで本音を取り出そうとすれば「気楽に生きてていいよな〜」「あなたと違って現実は大変なんですけどね」のような言い分が大半なものとして生まれてきそうな予感がする。

「じゃあ君は、一体何がそんなに大変なんだろう?」
「本当に、素敵そうに見える?」「それはなんで?」


そんな根源的な問いが「お金」を中心軸に、スエロの半生にある、家族、職業、健康、ゲイ、鬱、自殺など、読み手にとって安易にスルーする事が切り口からボールを投げ込まれる。
その球は、なかなか重いはずだ。

スエロは、自分の人生を生きるための手段として「お金を手放し」「持たない生活」を選んだ。
「じゃあ君は、どう自分自身を肯定し、人生を生きるの?」
「今度は君自身で考えてごらん」

本書が示している問いをシンプルに表わすなら、それだろうと思う。

なぜお金に囚われてしまうのか?

どのような過程を経ることで、スエロは「お金を持たない生活」を選ぶに至ったのか?
その疑問は、本書を読めば深く引きこまれ、解消される事と思う。

ここで自分たちそれぞれが考えていくにあたり起点となるのは、「なぜ自分たちはお金に固執するのだろう?」という問いだろう。
冒頭で挙げてみたように、自分たちはどうしたって先の見えない未来を思い、不安や憂鬱を感じてしまう。
先への不安から、なんとかして今、安心感を得たい。
少なくともこの不安感をどうにか解消したい。
資産とはこのような背景により形成される。お金がなぜ価値を持つのか?は、人が持つこのような弱さに起因している、と言い換えることもできるだろう。

お金に囚われること=未来への不安に囚われること

スエロがお金に対して示す態度は、このような関係性があるからだ。

「今ここ、を生きるための『○○』」を探すこと

彼はこう言う。


「万一こうなったらああなったらと思いわずらうことのほうが、むしろ、万一起きること自体よりも悪いんだ。それに、思いわずらうと何かとバランスをくずしやすくなる。
ようするに、現在に向き合って生きていれば、将来のことは将来が面倒を見てくれる、ってこと。将来どうするつもりかなんて、実際、自分でも分からないし、それについてはあまり考えないようにしている。無責任だと言う人もいるだろうけれどね。でもそれが私の選んだ道だから」




そして彼の宗教である、イエスの教えからも引用する。



「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」
『マタイによる福音書』6章34節




自分もこう軽やかに言え、生きれるようありたい。きっとだれだってきっと願う事だろう。
その願いを叶えるための彼にとっての手段が「お金を持たないこと」という選択肢だった、という事だ。

「今ここ」を生きるために『持たない』生活を選ぶ。

自分が肯定的に生きるため、スエロが採った選択を言い換えるならこうだろう。
そして前述のこの本が示す問いかけへとまた戻るなら、

「今ここ」を生きるための『○○』。
君にとっての『○○』を、僕の例を参考にしながらもう一度探してみるといい。


それがスエロからのメッセージなんじゃないかと思う。








 

極端な例は、議論を誘発しやすい。
「お金でない方法で、何かを解消していく/関係をもつ」。これはあらゆる分野に共通する大事なテーマの一つでしょう。
その意味でスエロの生き方は、議論にゆさぶりをかける極端な例として、重要な位置づけを持っている気がします。

 

スエロは洞窟で暮らすことにした
マーク サンディーン
紀伊國屋書店
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