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“わたし”と”本”の間、または”ことば”と”ビジュアル”の間にあるものとは?ー「本を読むときに何が起きているのか」ピーター・メンデルサンド (著)

本を読むときに何が起きているのか  ことばとビジュアルの間、目と頭の間
ピーター・メンデルサンド
フィルムアート社
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私たちが本を読む時、心の中や頭の中には、一体どんなことが起きているんだろう?


本を手に取る。
文字へと目を走らせる。
時に、登場人物が発する声を聞きながら。
時に、その行動や性格、口調、話す内容から、脳内で登場人物の姿を思い描きながら。
そして、物語の先を想像しながら、指はページをめくり、本を読んでいる。
あたかも本を手に持つことで、本が鏡であるかのように「自分の内側」を見ているかのように。

この本は「本を読むってどういう事なんだっけ?」という、そもそもすぎる問いを様々な切り口から問い詰めます。

まさに副題にある通り、あなたが本を読んでいる時の、

・「ことば」と「ビジュアル」の間にあるもの
・「目」と「頭」の間にあるもの

へ「本を媒体にすると、想像力って例えばどんな広がり方をするのか?」という目線から読書体験を解読し、更新していく本です。


アートディレクターだからこそできる編集法


この本の一番の面白さであり特徴は、数々のブックデザインを手掛けるアートディレクターによる編集という点でしょう。

「問いである文章」と「グラフィック」がセットになって全ページで展開され、読み手へ問いかけられます。

例えばこんな風に。

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著者の文章が、連想を生むビジュアルによってさらに想像が増幅され、問いが読み手に深く入り込む相乗効果につながる。
これはアートディレクターだからこそ出来る編集法でしょう。

そして、一つ一つのビジュアル変換力の確かさ。
「こういうビジュアルを持ってくるか〜」という刺激にわくわくしながら、読み手は文字だけでも、ビジュアルだけでも得られない連想体験に飲み込まれ、新しい読書体験が更新されていきます。

目を楽しませながら、問いの増幅がさらに膨らみ、喚起されていく連想を楽しむ。
一言で言えば「楽しい読書体験本」なのです。

アートディレクターが装丁という役割以外で書籍に介入すると、こんな面白い試みが出来る、という一例と言えるのでないでしょうか。

本が持っている共同創作性


もちろん単に目を楽しませるだけの本でなく、「そもそも本を読むとはどういう事なのか?」という根源的な問いへの、様々な切り口と考えるためのヒントも多く提示されています。

ここでは一つ、読書が持つ「CO-CREATION(共同創作)」についてのみ挙げてみることにします。

ここで言う共同創作とは、読み手が獲得するある種の自由という事についてです。
本は「言葉」をトリガーにすることで、「その人だけの」記憶と連想に基づく想像が作られていきます。
言わば「私にとっての○○」という、読書による多様な解釈体験です。

これがもしビジュアルや映像などによって、限定的なイメージを与えてしまったら、どうなるか?
ここで言う、本であるが故に豊富に持つ共同創作性とは、このことを指します。


「より色鮮やかだということは、より信憑性が薄いということに等しい」



「言葉が効果的なのは、その中に何かを含んでいるからではなく、読者の中に蓄積された経験の鍵を開けることができるという潜在的な可能性があるからだ」



より説明的に、より限定的に、表現を加えてしまうと、ある事柄への私たちの想像力を奪ってしまう、あるいはかなり限定してしまう事につながる。

あなたが本を読んで「面白く感じた」というのは、本からただ与えられたものではない。共同創作として、あなたと共に生まれ出たものである。
そういった読書体験が持つ関与性に基づいた、共同創作性。
ここからはそのポジティブな可能性と共に、「本を読む」という行為の価値についてすら再考できるのでは、と思います。

読み手それぞれの立場にとって、多様な問いと発見に満ちた本。
この本を読んだ前と後では、「本を読むこととは?」という問いへ続くその後の思考内容は、がらっと変わってくるのでは?と思います。