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人はどちらかに落ちる時がある。その想像から育つもの。ー「れるられる」最相葉月 (著)

する。
される。
する。
どちらかに
落ちる時が、
ある。



これは、今回紹介する本の帯に記されているコピーです。

人それぞれ、少しでも多くの人に読まれて欲しいと思う本があると思います。
それは、きっと相手ごとや状況ごとによって変わってくる事でしょう。
ただ、もう一歩引いて、今だからこそ一呼吸置き、手に取って、読まれて欲しい/読まれるべきという類の本もあると思います。

自分にとってその一つの本が、今回紹介する最相葉月著の「れるられる」です。


「する」「される」の「狭間」を想像する


人は「する」し、「される」。
言い換えると、人は「れる」であり、「られる」でもある。
そして、人はその両者の「狭間」を常にあやうく行き来しながら、生きている。


この事実を、「生む・生まれる」「支える・支えられる」「狂う・狂わされる」「絶つ・絶たれる」「聞く・聞かれる」「愛する・愛される」と、6つのテーマとエピソードから、読み手の想像力へと働きかけていくのがこの本です。


生むことと生まれてくる命、支援することとされること、精神疾患、自殺、声にならない人の声、そして人を愛すること/愛されること。
「自分には関係ない」と言える事なんて、何一つとしてない。
そこから垣間見えてくる、「する」「される」の間にある「わずかな狭間」。


この本が与えるのは、その「狭間の頼りなさ」と、「かもしれない、もう一人の自分」への想像力です。



「かもしれない」の想像力だけが、他者への共感を育てる


人は、誰だって「狭間」にいる。
人は、一瞬でそれまで他人事だった立場に入れ替わる事もある。


例えば、あなたは今日これから事故に遭い、障害を持って生きる事になるかもしれない。
妻を、夫を、突然亡くすこともあるかもしれない。
3ヶ月後、突然心が折れ、笑うことも働くこともできなくなる時がくるかもしれない。
そして、人は必ず誰しもが少しずつ衰えながら、老いていく。誰かに支えられることによって。


異なる立場への、または他者の痛みへの、想像力が出発点となる。
それをこの本では、さまざまなエピソードを通じ、感じてもらおうと伝えています。


だれであっても、今の自分と「かもしれない、もう一人の自分」との間に、明確な線を引くことは出来ない。
相対的で、不確かで、根拠が無く、全く頼りにならない「狭間」のなかで、自分たちは揺れ動きながら、生きている。


この本が提供する狭間への想像力、それを「知性」と呼ぶのだと、思っています。
また、その想像力を持った人の事を、「大人」と呼ぶのだと。
そして、その想像力を持った社会の事を、「大人の社会」と呼ぶのだと。



胸が苦しくなるニュースがある今、改めて手に取って読まれて欲しいと思う本です。





れるられる (シリーズ ここで生きる)
最相 葉月
岩波書店
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