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表現の技術という名の原点 “表現の技術”

「表現の技術ーグッとくる映像にはルールがある」高崎 卓馬 (著)

この本は今だけに限らず、これからも常に手の届くところへ置かれ、定期的に確認される事になる、そしてそれにより視線が回復される、または姿勢が正される事になる、指針となる本だと思いました。

「表現の技術」というタイトル、または絵コンテを例に取り展開される事などから、映像表現についてのノウハウ本のように一見見えるかもしれません。

が、「ものを考える、ものがたりをつむぐ、ものをつくる」という一連のその行為。

それに対する強い普遍性を持った言葉が、それを実践し続けた人の肉声として語られた、文字通り凝縮された貴重な本であると思います。

なんかええな、と思った。

あとで振り返るとそれは広告やった。

それでええねん。

大阪の田井中さんに言われたこのひとことで、僕は自分のやるべきことをはっきり理解しました。

そう。僕たちは「なんかええな」をつくるべきなのです。

「なんかええな」がない外見だけの珍しいものを「未来の広告」と呼んではいけない。

僕たちはそろそろ本質を見つめるべきではないでしょうか。

面白いものしか意味なんかないということに。

外側の新しさを面白さと呼ぶ虚しさに。

表現の使命はひとつ。

その表現と出会う前と後で その表現と出会った人のなにかを 1ミリでも変えること。

この精神とは、広告という領域を越え、あらゆる「ものを考え、つくりだすこと」における共通するものだと思います。

・物語の順序を変える

・空間を与え、観客だけにしか見えない状況をつくる

・立場を入れ替え、ズレをつくる

・描写だけで状況を説明する

・典型体験でなく、個別体験を描く

・ルールのある葛藤や対立を設定することで、安心して不安になってもらう

例えば、本に書かれているこれら切り口とは、映像だけの世界でなく、あらゆる企画を考えるうえでの基礎となるものでしょう。

が、この本で伝えられている最も大切なこと、それは「なんかええな」にたどり着くまでの、その過程における自分との向き合い方についてです。

これは本当に大切なことな為、以下に自分の襟を正すことも兼ねながら、簡単にまとめてみます。

本のサマリーとして、さっと見て頂くと良いかもしれません。

1)「そもそもこの商品には、どんなミッションを達成していく事が必要なのか、から考えていく」という事

広告は、ものを売る以上のことができる。

だからこそ、商品だけをただ見つめて、上記のような表現上の切り口だけでその言い換えをするのでなく、達成すべきミッションから考えていく。

それによって、ただものを売るための広告でなく、世の中を、人を、少しでも幸福にするための広告が達成できる、という極めて本質的なアイデアの起点です。

2)「つくり方をつくる」という事

新しい表現は、常に新しいつくり方とともに現れるもの。

だからこそ、まず手に入れたい表現を明確に意識した後に、それを手に入れるための方法ごと新たに作って行く、という事です。

これは段取り、または「ワークフロー」がもたらしやすいコモディティ化への対策と言っても良いでしょう。

3)「疑いつづける」「違和感を探し続ける」という事

あらゆる段階で、あらゆる角度で、自分のつくっているものを疑いつづける。

たとえ途中でほめられても終わりにせず、考え続ける。空気を読まずに考え続ける。

自分が素直に感じた違和感の正体を考える。

企画をしているときの「達成感」「できた」という感覚ほど危険なものはない。

だからこそ、疑いつづけることで表現は初めて強いものになっていく、という姿勢です。

4)「難しいほうを選ぶ」という事

面白いけどやるのは大変だ。

そう思ったら、それこそが今つくるべきものだと思いましょう。

その先にあるものは他のひとがなかなかやらないものだから。

人とちがうものをつくる。

そのために、選択肢はできるだけ難易度の高いほうを選ぶ。

それによって、表現は凡庸さから抜け出すことができる、という立場です。

5)「そもそもに戻る」「大きく考える」という事

企画が複雑になったり、クライアントの要望を表面的に解決しようとして混乱したら、「そもそも」に戻るべきです。

そもそもこの商品は誰に売りたいものだっけ。

そもそもこの広告は誰を喜ばせるためのものだったっけ。

ミッションに戻って整理整頓する。

そして企画がなかなか見つからない場合は、一度その考えの対象や問題を遠くから見つめるべきです。

今抱えている問題を大きな問題にすり替えるのです。

「女性用シャンプーの向上した性能を伝える」という問題で悶々としたら、「すべての女性を美しくしたい」「美しさとはなにか」と描くべき問題を大きくつかまえ直すのです。

今つくる広告を、今の世の中を少し明るくしたり、楽しくしたりする事へつなげていく。

この点こそ、特に自分にとっては最も大切な事だと思っています。

と、少々長くなりましたが、この「表現の技術」は、広告だとか、映像だとか、インタラクティブだとか、そういった領域を飛び越え、あらゆる人にとって、多くのヒントと原点を示す、とても重要な本だと思います。

定期的に見直して、その原点へ自分も立ち戻っていこうと思います。

本当におすすめの本です。


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