Design

書体がブランドに与える影響とは?効果的なフォント選びの為のイメージマップ(配布あり)

書体は、企業や商品・サービスにおけるブランディングにおいて、受け取る印象や記憶に対して大きな影響を与える決定要素の一つです。

例えば、ここに2つのコーポレート書体があります。左がルフトハンザ、右が資生堂書体です。
それぞれこの2つの書体から、どのような印象を連想するでしょう?

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例えば、ルフトハンザであれば
 「堅実な」「しっかりした」「真面目な」等

資生堂書体であれば
 「女性的な」「洗練された」「都会的な」「エレガントな」等

このようなキーワードが頭に浮かんだのではないかと思います。
また同時にルフトハンザと聞けば、あるいは資生堂と聞けば、上記の書体イメージが頭の中に浮かび上がってきた人も多いのでないかと思います。


つまり、ブランディングの文脈における書体とは「その企業や商品・サービスが、社会に対してどのような口調で語りかけるか?」というふるまいと、記憶に残される印象を規定するものと言えます。

デザインは、伝えたい人に対し、伝えるべき事とそれによって狙う効果とを、バランスを取りながら設計していく行為です。
そのうち文字とはその設計における「最小単位」に属するもの。例えるなら、料理における食材に当たるもの。デザインと書体の関係は、そう置き換えても良いでしょう。

だからこそ、ブランドのエッセンスをより活かし、信頼感や安心感につなげるためには、書体を上手に運用することがデザイナーはもちろんの事、ブランドをマネージメントする担当者や決済者にも求められます。
逆に言えば、誤った書体の選び方は、ブランドのクオリティに対する共感度や信頼度を低下させ、ひいては売上が低下する事にも関わってくると結論づけることすらできるです。


では、ブランドにとってより効果的な印象を与えるために、書体はどのようにして選べば良いのでしょう?

本エントリーでは、

Step 1. 「基本原則」から選ぶ
Step 2. 「用途」から選ぶ
Step 3. 「かたちのちがい」から選ぶ
Step 4. 「イメージ」から選ぶ(フォントイメージマップ・配布あり)

と4つのステップから、和文書体および欧文書体の選び方についてを紹介します。

これらはベーシックな書体の選び方であることから、この4つのステップを経る事で、今後きっと一定のクオリティは担保いただけるだろうと思います。
また「イメージマップ」は、ダウンロードしポスターのように気軽にお使いいただけるよう、配布版も今回用意してみました。こちらもぜひご利用してみてください。





Step 1. 「基本原則」から選ぶ


「判別性」「可読性」「誘目性」の三原則


「伝えたい相手に、伝わりやすい書体を選ぶこと」。コミュニケーションの原則として、この基準を起点としてまず考えていきます。
具体的には、「判別性」「可読性」「誘目性」の三原則です。


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伝わりやすい書体と一口に言っても、読み手が女子中学生の場合と、高齢者の場合とでは大きな開きがあります。
もちろん「それがどんな内容のものであるか?」という伝える内容、文脈によっても伝わりやすい書体は変わります。
さらに、伝える相手が同一であったとしても、雑誌で読む場合と、スマートフォンで読む場合とでは、読みやすい書体の定義も変わってくることでしょう。


書体には様々なかたちやトレンドはありますが、「だれに?」と「どのような状況で?」から、都度この3つの原則に則り、その書体候補が本当に適切か?を判断していく。
こうして書いてしまうと当たり前すぎる事ですが、これが一番の基礎となるポイントでないかと思います。



Step 2. 「用途」から選ぶ


「用」に応じる書体とは


書体は用途があって生まれたものである事から、用途に合った機能的な書体を作る/選ぶという視点ももちろんあります。
例えば「Times New Roman」のように、新聞における可読性に重きを置いた書体などがそれにあたります。
また「Frutiger」のように、空港のサイン用に作られた書体などは、誘目性に重きが置かれたものとして捉える事ができるでしょう。
判別性で言えば、ロンドン市交通局で用いられている「Jonston」のように、狭いスペースに文字を押し込めた場合でも、遠くから識別しやすく設計された書体もあります。


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また、先ほども少し触れました「メディアのちがい」というケースもあります。例えば、デジタルデバイスにおける横組みを前提に開発された明朝体である「TP明朝」がそれにあたります。


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明朝体は横線が細い事から、解像度が低いディスプレイの場合における読みにくさという点で、デジタルメディアでの使用シーンは多くなかったのが実情でした。
しかしTP明朝では、欧文フォントではメジャーな「コントラスト」という概念を日本語のフォントとして初めて導入。横線の太さが選べるようになったことで、小さなサイズでも潰れにくくディスプレイでも見やすい明朝体が実現されています。
実際、TP明朝はデジタルコンテンツであるTVアニメ「アルドノア・ゼロ」にて、可読性が担保された明朝書体として選ばれている、といった実績も既にあります。


このように、使用目的や使用メディアの特性を優先し、最も適切な書体を選ぶあるいは作る。そういった視点もあります。


Step 3. 「かたちのちがい」から選ぶ


3-1. 「和文書体」のかたちのちがい


書体はかたちのちがいからカテゴライズする事ができます。
大きく分けると和文は、「明朝体」「ゴシック体」「丸ゴシック体」「楷書体」の4つに分類可能です。それぞれの「かたち」と「特徴」、「使用効果」を挙げていくと、以下のようになります。


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3-2. 「欧文書体」のかたちのちがい


欧文書体も和文書体と同じく、かたちのちがいによってカテゴライズする事ができます。
大きく分けると欧文は、「ローマン体」「サンセリフ体」「スクリプト体」「スラブセリフ体」の4つに分類可能です。
それぞれの「かたち」と「特徴」を挙げていくと、以下のようになります。


・ローマン体


エレメントの端にセリフを持つ書体の総称です。歴史と品位があり、落ち着いた印象を演出します。
またローマン体には、時代順に「ヴェネチアン・ローマン」「オールド・ローマン」「トランジショナル・ローマン」「モダン・ローマン」と区分することができます。


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・サンセリフ体


サンセリフ体は、セリフのない書体の総称です。「サン(sans)」はフランス語で「ない」という意味で、装飾的な要素が少なく、無機質でストレートなデザインを持つため使いやすさを持つのが特徴です。
サンセリフは「グロテスク・サンセリフ(Grotesque Sans-Serif)」「ネオ・グロテスク体(Neo-grotesque Sans-Serif)」「ジオメトリック・サンセリフ(Geometric Sans-Serif)」「ヒューマニスト・サンセリフ(Humanist Sans-Serif)」の四つに区分することができます。


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・スクリプト体


スクリプト体は、手書きの流れを残した書体の総称です。高級感や繊細さを演出したい際に用いられます。
続け字になるよう設計されているため、利用する際は字間を空けてはならない点に注意が必要です。
主な書体には、「Snell Roundhand(スネル・ラウンドハンド)」「 Palace Script(パレス・スクリプト)」「Excelsior Script(エクセルシオール・スクリプト)」などがあります。


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・スラブセリフ体


スラブセリフ体は、四角くて厚いセリフを持つ書体の総称です。広告用に作られた背景から、どっしりとした印象を持ち、ポスターやロゴなど目を引かせたいデザインに向いているといえます。またサンセリフ体と同様に力強い表現をしたいときにも使えます。
主な書体には、「Clarendon(クラレンドン)」「Egyptienne(エジプシャン)」「Memphis(メンフィス)」「Rockwell(ロックウェル)」などがあります。


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Step 4. 「イメージ」から選ぶ(フォントイメージマップ・配布あり)


これまでのStepを前提理解としたうえで、とはいえ「書体がもつ雰囲気から、直感的に自ブランドに適切な書体を選ぶ」という選び方ももちろん必要になってきます。
そこで、和文・欧文の書体を印象度によってマッピングし、俯瞰で印象を把握しながら直感的に選べることを目的にした、A1サイズの「フォントイメージマップ」なるものを、今回簡易的に作ってみました。


ちなみに出力すると、下のようにポスターのような形で使う事ができます。


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上下軸が和文・欧文書体。左右軸が Old Style・New Style という区切り方です。

・書体は自分が今所有しているものでしかプロットしていない為、限定的なマップである点
・一枚で和文・欧文をセットに見れるようしたかった事から、マッピングの精度に粗さも見られる点


などがまだまだ課題ですが、今のところはベータ版程度な認識でみていただけると有り難いです。


以下に画像とPDFでも配布用として用意してありますので、ぜひご活用などいただければ。


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フォントイメージマップをダウンロード(PDF)




まとめ


俯瞰目線からの直感的なチョイスという目的から、今回は簡易的な「フォントイメージマップ」を用意してみましたが、いかがでしたでしょうか?

とは言えど、書体選びのポイントはそれ単体の印象だけで良し悪しを判断するのでなく、伝える相手や状況、与えたい効果に応じて自覚的に書体を選択する、という点に変わりはないと思っています。

また、ここでは触れませんでしたが、書体の印象は、同じ書体を使った場合でもウェイトと字間によって大きく変わってきます。
合わせて字面率の違いも書体の特徴となり、文字組においては読みやすさの違いとして関わってくる点にも注意が必要です。

どのようなトーンで語ることが、そのブランドのエッセンスをより活かし、共感性や信頼感、安心感へつながっていくことになるのか?

デザインの構成要素における最小単位である「書体」に着目し、「逆算的に、その選び方から整えることで、まずブランドの印象に一貫性や秩序を与えていく」という、ブランドマネージメントの一歩を始めてみる進め方も一方で有効でないかと思います。